「FighterAce用エンジン音のあれこれ ASh-82編」
HPにも書いたとおり、今回のASh-82のエンジン音は、意外なところからサンプリングしました。
サンプリングしたのは、Fw190-A8/Nのエンジン音。YouTubeなどにも動画が公開されている、唯一飛行可能なフォッケウルフです。このフォッケウルフ、いろいろ調べてみると、どうやら 新造機?らしいのです。(rebuildですから新造….ですよね.../NがNEWの意味ではないかと思われ...)
そしてそのエンジンに使われているのが、ASh-82"T"なるエンジンなのです。詳しくはこのサイト(http://entity38.de/aeronews/04-11/fw190.html)で調べたのですが、中国でライセンス生産されたASh-82Tとの事です。
なぜ色々調べていたかというと、かなり前にBMW801は現在稼動できるものが無いとのコンテンツを見たことがあったからです。正直最初は、オリジナルをレストアしたものと思っていたのですが、Fw190-Aのエンジン音をいずれ作ろうと調べていたときに新造+エンジン代用という事がわかりました。大戦機をレストアや新造をするときに、やもうえない事情でエンジンを代える事はままあることで、良く知られている例としては、新造のフライアブルな零戦(X-133など)は稼動できる「栄」が確保できなかったので、スペックの良く似たPratt
& Whitney R-1830を搭載しています。(オリジナルの栄を搭載して飛べる零戦は「栄21実機セット」でサンプリングした、プレーンズ・オブ・フェームの零戦52型のみです。)
さて、このASh82-Tはどういうエンジンかというと、大戦後、双発旅客機(IL-14)用に開発したASh-82FNの馬力アップを狙ったエンジンです。FNが1850hpに対し、Tが1900hpと50hpアップしています。稼動できるBMW801が無い今、Ash82をエンジンとして選択するのは、そのスペックが非常に良く似ているからだと思われます。
BMW 801-D2:
2列空冷星型14気筒 (ボア x ストローク)156mm x 156mm (直径 x 長さ)1307mm x 2006 mm
(排気量)41.8L (出力)1730hp (重量)1213kg 【FW-109A】
Shvetsov ASh-82T: 2列空冷星型14気筒 (ボア x ストローク)155.5mm x 155mm
(直径x 長さ)1260mm x 1980mm
(排気量)41.2L (出力)1900hp (重量)??? 【IL-14】
<参考>
Shvetsov ASh-82FN: 2列空冷星型14気筒 (ボア x ストローク)155.5mm x 155mm
(直径 x 長さ)1260mm x 1980mm
(排気量)41.2L (出力)1850hp (重量)900kg 【La7・La5 Tu-2】
違うところは馬力の違いと、重量の違いです。Fw190-A8/Nはエンジンが軽い分バラスト積んでも良いらしいのですが....基本的な構造・仕様はASh-82FNと変わりありませんので、新造のFw190-A8に装着された状態の音であれば、まずLa7などのレシプロ戦闘機の音として使用しても問題ないと思います。
ちなみにこのA8を新造した会社「Flug Werk」は現在D9の新造をしているようです。Jumo213Aが無いので、Allison V-1710を載せて飛ぶ予定だとか...もう一つ情報としては、前にもブログに書きましたが、良く動画サイトに投稿されているフライアブルなYak3もエンジンはAllison V-1710 だそうです。
空冷エンジン音ASh−82実機セットVer1.00について
さて、音のサンプリング元の話は、それくらいにしておいて、今回のFA用エンジン音作成の話です。今まで、「ハ45/誉21」「栄21/ハ115」「VK-107A」と作成してきて、自分の作りたい音を作成するに当たってのポイントを大分掴んできました。GILERA_IOM作成のFA用エンジン音実機セットは、現在以下のような観点で作成しております。
・実機の(もしくはそれに類する)エンジン音から作成する。
・飛行音を作成する。(止まっている機体のエンジン音にならないよう工夫する。)
・音の不快なうねりを極力抑える。(FAではエンジン音を繰り返し鳴らすので、少しの音の違いが不快なうねりにつながる。)
・離陸音と飛行音をなるべくシームレスに仕上げる。
その上で私が作成するエンジン音は、以前に書いた「….あれこれ」を読んでいただくと判るのですが、サンプリングできる音の状態によって、大まかに2パターンの作成方法を取るように最近パターン化してきました。
安定した飛行音がサンプリングできる場合・・・@
安定した飛行音がサンプリングできないが、エンジン音そのものはサンプリングできる場合・・・A
どちらも無理な場合・・・今のところ作成不能
@は移動している音からサンプリングし、その一部の音を利用してエンジン音を作成する事となります。安定した飛行音とは、雑音(会場の音楽やギャラリーの声等)が無く、最低でも1.5秒程度(出来れば3秒程度)のスピードとピッチの変化の少ない音の事です(ということは必然的に遅いスピードで移動している時の音)。但し、「栄21編」でも書きましたが、音が変化している中で1.5秒〜3秒を切り取った場合、どこで切り取るかによって、音か大きく変わりますので、自分のイメージする音になるかどうかは、切り取ってFAの中で飛ばしてみないとわからないということになります。(最近は経験値でだいだいこの辺の音だとうまくいきそうだ...とかわかりますけどね。)一連の飛行音を聞いてこんな音を作りたいと思っても、ある一部分を切り取って飛行音を作った場合そのイメージ通りに仕上がるかどうかわからない…というところが難しいところです。そのかわり、うまくいった場合は、飛行しているプロペラの感じまで表現できますので、躍動感のある音になります。
Aは止まっている機体のエンジン音からサンプリングし、移動感を出す為に、不快にならない程度に飛行音を重ねるというやり方です。止まっているエンジン音は、安定した音をサンプリングできますが、そのまま作成すると、移動感が伴わない(他機の音として聞いた場合、とても不自然な音として聞こえる。プロペラが移動している感じがしない等)音になってしまいます。エンジンそのものの音としてはキャラクターが出ますので、あとはどのように移動感を出すかの話になります。(但し、止まっているをサンプリングする場合も、少しコツがいるんですけどね。)安定した飛行音が確保出来なくても、補助的になら利用できるケースがままあります。例えば、飛行音としてそのものを利用したくても、音が貧弱すぎて使えない場合、エンジン音そのものの音に重ねる音と割り切れば利用することができます。また、狙いの機種のプロペラ音では無くとも、類似するプロペラ音をサンプリングできれば、利用することができます。
前置きがかなり長くなりましたが、今回のAsh-82の場合は@の作成方法となりました。構想1時間・ベース音製作3時間。今までリリースしてきたエンジン音からすれば驚異的なスピードで出来上がりましたが、さらに細かい調整で1週間かかってしまいました。「栄21」の足掛け半年…とか「ハ45」の足掛け3ヶ月…に比べれば、全然早いんですけどね。毎度頭をかかえる「うねり」の問題が今回はあまり出なかった事が大きいです。うねらないコツを掴んできたのかもしれません。(どこまでやっても駄目な場合も多いですけど…)調整の1週間は、「軽快」「重厚」のバランスの調整でした。JWG-hato氏の意見を賜りつつ、少しずつ調整した結果、今回の音に落ち着きました。もちろん、
「原音の音に忠実に、且つ不自然にならないようバランスの取れた音を」…
を考えて作成してあります。
上にもあるとおり、音は「聞く方」と「鳴る方」の相対的な状態によって常に変化しています。気圧によっても伝わり方は変わりますし、お互いの速度によっても聞こえ方が変わります。(わかりやすいのは、緊急車両のサイレンですよね〜…ドップラー効果ってやつですか…)FaighterAceの飛行音はそのうちのたった2・3秒を利用して作成しています。(もっと長い時間でもいいですが、無下に長くてもPCの負担になりますし)そういう意味から言うと、「この音がAsh-82の音です!!」とは言えませんが「この音が私のイメージするAsh-82の音です!!」ということなのでしょうね^^(「栄21」でも同じ事を書いたような…w)
しかし、こうやって聞き比べてみると「栄」と同じ14気筒のエンジンですが、かたや27.1L、かたや41.2Lだけあって、音が重厚ですよね。(栄はバタバタしつつも....比べてしまうと軽快ですわな^^)
SU機乗りの方に使っていただけることを祈りつつ、「ASh-82編」はこの辺で...
2008.05.17 KURE_GILERA_IOM
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